研究概要 |
光合成電子伝達系における,タンパク質に含まれる個々のアミノ酸の役割を明らかにするために,光合成反応中心に結合したチトクロムを遺伝的に改変する実験系を活用し,進化の過程で保存されているアミノ酸の役割を明らかにすることを目的とした.また,チトクロムをはじめとする光合成電子伝達系と環境適応および進化との関係をさぐることを目的とした.2年間にわたる研究で,以下の成果を得た. 1.光合成反応中心結合型ヘムが可溶性チトクロムcから電子を受け取る部位について反応部位の酸性アミノ酸が疎水性アミノ酸に変化していることがわかった.突然変異の導入によってそれを実験的に確認した. 2.自然突然変異により反応部位が変化したと考えられる細菌のタンパク質の解析を進め,普通の4つのヘムの代わりに3つのヘムを持つチトクロムが,確かに機能していることを,確認した. 3.B.viridisチトクロム遺伝子をR.gelatinosusに導入し発現させることに成功した.これにより,立体構造が解明されたタンパク質で遺伝子操作によりアミノ酸を改変する実験系が確立した. 4.可溶性電子受容体との反応部位において,B.viridisでは酸性アミノ酸が中心的な役割をはたしており,R.gelatinosusではそれに加えて疎水的アミノ酸の役割が大きいということがわかった. 5.進化との関係で,光合成遺伝子発現と励起エネルギー移動の酸素環境への適応についていくつかの新知見を得た.
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