研究概要 |
1)OBCAM, Kilonは、視床下部バソプレッシンニューロンの樹状突起に特異的に発現している事がわかった。この発見は、樹状突起特異的接着因子の初めての報告である。 2)Thy-1,F3等の接着因子慢性浸透圧刺激した下垂体後葉でdownregulationされることを見出した。これらの接着因子の低下は細胞間結合を弱め、可塑的変化を可能にしているものと推測される。 3)慢性浸透圧刺激を与えた場合、大型のものが血管系へ、小型のものがグリア系へ残るという結果を得た。このことは、終末部の肥大化がSproutingではなく、グリア細胞の形態変化と終末部の再構築(配置)により生じたことを示している。 4)神経活動の増加に伴う終末部へのCa2+流入増大は、カルシウム結合タンパクであるカルレチニンのupregulationを引き起こし、流入したカルシウムを緩衝しているものと考えられる。 5)慢性浸透圧刺激を与えたラットにおいては、グリア細胞の細胞質突起が著しく短くなることをin vivoレベルで初めて証明した。 6)培養した下垂体後葉グリア細胞における解析では、グリア細胞の形態変化に、微小管配列変化やアクチン繊維の重合、脱重合が生じることがわかった。実際、下垂体後葉のグリア細胞は、他の脳部位のグリア細胞とは異なり数多くの微小管を持っていることがわかった。さらに、微小管を制御するタンパクとしてMAP2のアイソフォームで低分子型D体が多く発現していることも判明した。 7)培養したグリア細胞の形態変化は、神経あるいはホルモン受容体を介して起こしていることも判明した。 8)グリア細胞は、Ca^<2+>動因にかかわる受容体も数多く発現していることがCa^<2+>-Fura-2を用いた測光により判明した。このことは、神経-グリア相互作用があることを示している。 9)c-fos遺伝子は、一般に神経活動後一時的にしか発現しないと考えられてきたが、慢性浸透圧刺激は、c-fos遺伝子の持続的発現を引き起こす事がわかった。このことは、生体内においては、転写調節因子の発現がより複雑化していることを示している。
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