研究概要 |
哺乳類の子宮内膜細胞の増殖は性ステロイドホルモンによって調節されている.この性ステロイドホルモンによる細胞増殖は、局所的に合成され自己分泌的、傍分泌的に作用する成長因子によって仲介されると考えられている.子宮内膜は,単層の上皮細胞と多層の間質細胞で構成されている.この上皮細胞と間質細胞の相互作用を解析するために3次元培養系の構築をした.上皮細胞のDNA合成は,間質細胞との共培養において増加した.また,間質細胞のDNA合成は上皮細胞との共培養によらず,変化はなかった.Estradiol-17β(E_2)投与により上皮細胞のDNA合成は,単独培養において増加したが,間質細胞との共培養においては顕著な効果が認められなかった.以上の結果より,間質細胞層は上皮細胞の増殖促進効果を持つこと,E_2は上皮細胞に直接作用し細胞増殖を促進することが示された. 間質細胞には,上皮成長因子(EGF)やTransforming growth factor α(TGF-α)及EGF受容体(EGF-R)が発現していることを明らかにした.EGFとTGF-αの2日間処理は間質細胞の細胞分裂率を濃度依存的に高めた。E_2(10^<-9>M)とプロゲステロン(P、10^<-7>M)を同時投与した時、細胞分裂率は2.3倍に増加した.EGF-Rの特異的な阻害剤であるRG-13022(10^<-5>M)を投与すると、各処理による細胞分裂率の増加は全て抑えられた.E_2+Pの24時間処理でTGF-α mRNAは増加し、2.8kb EGF-R mRNAは減少した.EGF-R mRNAはE_2の24時間処理で増加し、EGFmRNA量はホルモン処理では変化しなかった.以上の結果から、間質細胞の増殖はE_2とPが協同的に作用して高めること、ならびにこの増殖機構にはEGF-Rが関与することが分かった.
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