研究概要 |
エクジステロイド脱リン酸化酵素は,エクジステロイド(脱皮ホルモン)のリン酸抱合体(不活性型)を基質として遊離型エクジステロイド(活性型)の生成を触媒する酵素である.この酵素は,昆虫体内のエクジステロイドホメオスタシスの調節(すなわち胚発生や脱皮と変態の調節)に重要な役割を果たしていると考えられている.しかし,この酵素の酵素化学的性状については全く解明されていない.そこで,本研究は,エクジステロイド脱リン酸化酵素を精製し,基質特異性や反応速度など酵素の性状を明らかにすること,およびこの酵素の遺伝子をクローニングすることを目的として行われた.本酵素は,カイコの非休眠卵(産卵後3日目)を材料としてイオン交換,ハイドロフォービック,ゲルろ過など各種クロマトグラフィーにより,電気泳動的に単一のバンドとして精製できた.本酵素の細胞内分布や基質特異性,各種インヒビターによる阻害実験などから,新規のホスファターゼであることが明らかとなった.次に,精製された酵素のアミノ酸配列をもとにしてRT-PCR法によりcDNAのクローニングと塩基配列の解析を行った.得られたcDNAは1620bpで331残基のアミノ酸を持つタンパク質をコードしていた.アミノ酸配列の相同性の検索からも新規のタンパク質であった.このタンパク質をSf9細胞で発現させ,精製したのちに活性を測定したところ,エクジステロイド脱リン酸化酵素が検出された.
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