研究概要 |
(平成11年度)過去の研究課題により確立された方法で受容体蛋白質の精製を進めた。約10kgの成熟キンギョ卵巣より可溶化した約3gの細胞膜画分蛋白質を、Q-Sepharose陰イオン交換及びSephacrylS300HRゲルろ過クロマトを経て約50mg程度の活性画分を得たが、収量の大幅な低下により当初予定していた続く3段階のクロマト(Porosイオン交換、疎水性、WGAレクチンアフィニティ)の遂行が困難と判断した。そこで、ステロイドホルモン結合アフィニティクロマト法の確立を目指した。BIAcore生体分子相互作用解析装置(ファルマシア社)を用いて、受容体との結合能を維持しつつ化学修飾できる部位を検討し、ステロイド骨格中C3位のケト基をカルボキシメチルオキシム化できる事を見出した。これを基に分取スケールの成熟誘起ホルモン結合Sepharoseカラム(100ml)を作成した。細胞膜可溶化画分を直接の試料とした場合、ホルモン結合活性は0.15M NaCl含有緩衝液によりカラムに結合し、0.15-1M NaCl濃度勾配で溶出し90%以上の夾雑蛋白質を除去できた。作成したアフィニティカラムは非常に精製効率の高いカラムであることが分かった。(平成12年度)平成11年度に得られた成績を基に、8.4kgのキンギョ卵巣(800匹)から精製を開始し、S-300HR(ゲルろ過)、Q-Sepharose FF及びPoros HQ(イオン交換)、Phenyl Superose(疎水性相互作用)および、本来のリガンドである17α,20β-DPを高密度に固定化した大型カラムを用いたgel retardation(遅延クロマト)法を行った。最終的に得られた画分には198,110,93,67,41KDaの5本のバンドが確認できた。この内93,67のバンドは他に比べ含量もやや多く、11年度に確認していたバンドと同一のものと考えられた。これらのバンドをゲル内トリプシン消化後、生成ペプチド断片のmicro sequenceを試み、僅かに、93KDaからIT(P)H(L)PDF、67KDaからE(T)V(D)EL(Y)AXLFの配列が得られたが、Genbank databaseからは興味ある遺伝子との相同性を見出せなかった。有意のアミノ酸配列情報が得られなかったのは、最終的に得られた標品が配列解析のために僅かに少なかったことが原因である。現在、2倍強である19kgの材料の用意を行っている。魚類卵表層画分中の有用成分の解析:卵成熟誘起ホルモン細胞膜受容体と同様に卵表層画分に存在し、卵成熟期及びその前後の時期に重要な働きを行う成分の同定を行った。メダカ卵の表層胞内容物中から受精時の卵膜硬化現象(受精膜形成)を特異的に誘起する活性成分を精製単離しalveolinと命名した。cDNAクローニングを行い遺伝子構造解析の結果、876bp、アミノ酸265残基からなるメタロプロテアーゼであった。Alveolinは特定の卵膜成分の限定分解を行うことで、卵膜硬化の一連の過程を誘起することを明らかにした。
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