研究概要 |
原始的貝形虫類プラチコーパの一種である日本産種Keijcyoidea sp.に焦点を当てた. プラチコーパの生態等については研究報告がきわめて少なく,ほとんど不明のままであった.干潮時の岩礁地でアラメを採集し,仮根部分を洗って得られた堆積物を検鏡したところ,これまでの経験上最も高い個体数密度で本種を採集することができた.詳しい行動やマイクロハビタットを調べるため,生体標本を観察した.その結果,移動には2対の触角と尾叉のみを使うこと,その生活場は表面ではなく,粗粒砂の中であることがわかった.Keijcyoidea sp.の体制は,他のPlatycopaと基本的に変わらないため,他のPlatycopaの分類群も同様な生活様式をもつことが示唆された. 発生学的,比較解剖学的に以下の点が明らかにされ,原始的貝形虫類プラチコーパの進化学的な知見が深まった. 1)脱皮齢は9齢ある.2)雌雄の交尾器は脱皮ステージA-3(第6齢)より原基として発現し,既にこの段階で性的二型がみられる.3)胴節,二叉型の第二触角など,この分類群のもつ特徴的な形質は,幼体初期から発現する.4)目は無いとされていたが,ノープリウス眼をもつ5)背側に開口するといわれていた肛門は,腹側に開口する。6)肛門節のさらに後部にユニットを持ち,これはTelsonとみなすことができる.7)Tblsonからは,一対の枝状肢が発達し,これはPodocopinaのcaudal ramiとは相同ではなく,furcaである.8)furcaは,発生の最終段階で最も発達する.9)雌雄の交尾器は,ともに第4胴節から派生する.
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