平成11年度は、ホタルイ属(Schoenoplectus)植物に存在する新種あるいは雑種と推定されている植物のうち、ハタベカンガレイ(推定新種)および近縁種のカンガレイとヒメカンガレイの形態について21形質の測定を行い、主成分分析法を行った。その結果、3種の植物はそれぞれ異なるクラスターを形成した。したがって、これら3種の植物はそれぞれ独立した種であることが明らかになった。また、3種の植物の根端細胞において、個体内・個体間における染色体数の著しい変異があることを発見するとともに、ハタベカンガレイは他の2種と倍数関係にあることを明らかにした。 12年度は、上記3種に加えた8種に関して染色体数変異の解析を行った。その結果、根端細胞においては以下のとおり個体内・個体間における染色体数の著しい変異があることが明らかとなった。 ホタルイ:2n=35〜44、イヌホタルイ:2n=66〜74、サンカクイ:2n=37〜42、フトイ:2n=36〜44、ツクシカンガレイ:2n=64〜70、タタラカンガレイ:2n=37〜44、イヌサンカクホタルイ:2n=56〜60、ネヒキサンカクホタルイ:2n=48〜58。 一方、茎頂の分裂細胞においては変異幅は小さく、種によっては染色体数が一定していた。これらの分析結果より、1)根端細胞と茎頂細胞とでは染色体数変異の発生機構に違いがあること、2)亜種関係のホタルイとイヌホタルイは倍数関係にあること。イヌサンカクホタルイはホタルイとハタベカンガレイの雑種であり、ネヒキサンカクホタルイはホタルイとツクシカンガレイ(推定新種)の雑種であると推定できた。
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