研究概要 |
ほとんど記載がされていない新世界ザルの歯根形態を記載することを目的として,リスザル臼歯の歯根形態を観察した。 上顎大臼歯は頬側2根,舌側1根の計3根が基本型で,この型は第1大臼歯に見られた。遠心位の歯では歯根の融合傾向が強くなり,頬側の歯根が融合して2根,さらに融合が強くなると1根の場合もあった。根間稜は3根の場合にはY型であったが,歯根の癒合が強くなるとT型となり,2根の場合には一型を呈した。歯槽には根間中隔は認められず,歯根離開の程度が小さいことが示唆された。 下顎大臼歯は近心根および遠心根の2根がみられる。これらの2根は遠心位の大臼歯ではしばしば癒合する。歯根の癒合が軽度の場合には舌側のみ癒合し,頬側からは2根,舌側からは1根に見える樋状根の形態を呈した。樋状根は第二大臼歯に最も多く出現した(23.4%,N=91)が,第1・第3大臼歯では出現頻度が低かった。根間稜は2根間を結ぶ直線であったが,上顎に比べて不明瞭であった。 上顎小臼歯は頬側根と舌側根の2根をもつものが最も多かったが,第2小臼歯では半数以上が1根であった。上顎乳臼歯では第2乳臼歯は1根であったが,第3,第4乳臼歯は大臼歯と同様,頬側に2根,舌側に1根をもっていた。第4乳日歯は歯冠,歯根とも第1大臼歯と類似していたが,第4乳臼歯の方が歯根は細長く,3根が離開していた。第3,第4乳臼歯根間稜はY型であった。下顎小臼歯の大部分は1根であった。第4小臼歯の31.6%は近・遠心に位置する2根をもっていた。第2,第3乳臼歯は代生歯と向様,1根であった。第4乳臼歯は上顎と同様,第1大臼歯と同じ歯冠,歯根形態をもっていた。 以上から大臼歯の歯根は歯冠サイズの縮小に応じて癒合すること,乳臼歯は代生歯の形成余地を考える形態を呈すること,小臼歯は乳臼歯より臼歯化が進んでいないことが明らかとなった。
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