研究概要 |
ナノメータサイズの磁性体微粒子が非磁性金属中に分散したグラニュラー磁性体において巨大磁気抵抗GMRが観測されるが,低磁場における変化率が小さいことが応用上大きな欠点となっている.グラニュラー磁性体においても,粒子間の磁気的相互作用が強く働く系において低磁場で感度の高いGMR効果が現れる可能性がある.ところが,従来のグラニュラー磁性体は,非固溶の関係にある合金を熱処理することにより磁性粒子を析出させることにより作製していたために,粒子径と分散量を独立に制御できず,相互作用に支配された磁気的秩序は実現できていなかった.本研究では、独自のクラスター堆積技術を用いて,粒子径と分散量を独立に制御したFe/Ag薄膜を作製し,その磁性とGMR特性を詳細に調べた.そして,以下の結果を得た. 1.平均粒径が5nmのFe粒子をAg中に0から100%の範囲で厳密に制御して分散できた. 2.分散量の増加に伴い粒子間の相互作用が強くなりフェロ的に働くようになることが分かった. 3.Feの分散量が35at%程度において,5Oe程度の低磁場で磁化反転がおき,しかも10%程度のGMR変化率を示す薄膜が作製できた. 4.粒子系において典型的なキュリー・ワイス型の磁気秩序とフェロオーダーリングを初めて観測できた. 5.アンチフェロ的な相互作用が導入できれば,ランダムな磁気秩序がえられる可能性があり,より大きなGMR変化率が期待できる. 以上のように,軟磁性とGMRが共存するグラニュラー磁性薄膜が作製できることを初めて明らかにできた。今後,より大きなGMRを発現させるための研究が求められる。
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