研究概要 |
本研究は,パラメータの変化に対する各波長のデータ間の相関をとることにより,同一の振る舞いをするスペクトル成分を抽出し,分析を行う事を目的としている。この方法ではあらかじめ予備的な処理が不要であり,また現実の物質の存在に沿った解析が可能である。パラメータが2個以上の場合,人間がスペクトル形状を見てその特徴を判定する事はきわめて困難であるが,本手法を用いれば,多次元空間内の相関のピークを検出するのみで多くのパラメータに従った複雑な系のスペクトル解析も容易に行うことができる。 スペクトルを再現性よく検出必要があるため,皮膚測定用のプローブを作成した。血流量の変化による色の変化のないプローブを設計した。光源についても,被測定領域の外側から皮下に進入する成分が大きく色に寄与を考慮した。 皮膚のように強散乱物体中の光拡散のシミュレーションを行った。これまで報告されている手法は分光情報を含んでいないので,本研究では新たに分光情報も取り込んだモンテカルロシミュレーションを行い,色についての評価を行うことができた。皮膚に紫外線を照射し,照射後のスペクトルデータを取得し,メラニンとヘモグロビンの変化を測定した。紫外線量を変化させた実験を行い,結果を解析した。お湯につけた後のスペクトルの変化についても同様の実験を行い,この場合,紫外線照射と異なり,メラニン量は変化しないことを確認した。ヒトの皮膚について,ゼラチンモデル,および,実際に採取した皮膚について,皮下に注入する前の色素の色から,注入後の見え方の予測を行う手法を検討し,臨床応用を試みた。刺青のように人工的に皮下に色素を注入した場合,色素自体はある程度分解していく。その際の色の変化を測定し,これまで困難であった,色変化の予測がある程度可能となった。
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