研究概要 |
真空蒸着法を利用して界面制御した有機/無機および有機/有機ナノ構造を構築し,その配向構造と吸収および発光特性との関連について検討した。 アルカリハライド単結晶劈開面上でオリゴシランやフェニレンビニレンオリゴマーの配向膜が得られた。オリゴマーの分子配向は蒸着条件により制御でき,また,膜の吸収および発光強度は分子配向に大きく依存していた。基板面に対して分子鎖が平行に吸着する時,最大の吸収および発光強度が得られることを見い出した。また,キナクリドン色素は,基板温度や蒸着速度などの条件を選択することにより配向構造の異なるナノメートル厚の薄膜を形成することを見いだし、膜の吸収特性も配向構造に依存して変化することを明らかにした。さらに、有機超電導体として知られるテトラメチルテトラセレナフルバレン-テトラシアノキノジメタン錯体薄膜は、半導体機能を有するα型に結晶化して配向成長することを見いだした。 また、配向膜の大面積化および光学特性の低次元化を実現するため、ナノメートル・オーダーで界面制御されたポリマー超薄膜基板の作成を試みた。ポリジメチルシランおよびポリパラフェニレンビニレンを加熱したガラス上で圧着掃引することにより、厚さ十数ナノメートルの一軸配向超薄膜の作成に成功した。このポリマー配向膜を基板として各種オリゴシランやフェニレンビニレンオリゴマーを蒸着すると高度に配向した相当するオリゴマーの薄膜が得られることを見い出した。これらの薄膜は吸収および発光の著しい異方性を示し、二色比(R// /R⊥)の最大値は40以上に達した。また、摩擦転写法を酸化インジウム・スズ(ITO)導電性透明電極ガラス上へ適用した結果、ガラス上と遜色のない配向膜が作成できることを見いだし,従来困難とされていたITO電極上での配向膜の作成に成功した。 さらに近年光記録媒体として大いに期待されているメロシアニン色素の自己組織化膜のドライプロセスでの作成を試み、薄膜のアミン蒸気処理あるいは金属塩水溶液への浸積により会合体が形成することを見いだした。その際、非晶質膜の創成が会合体形成に不可欠であり、結晶化の抑制は積層速度の制御により可能であることを明らかにした。会合体薄膜の吸収特性は、メロシアニンに導入するアルキル鎖の鎖長で制御できること、さらに浸積順の選択により、マルチ吸収ピークを有する薄膜の創成に成功した。
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