研究概要 |
この研究では,乗法計画問題,つまり複数の凸関数の積を含む最適化問題のクラスに対する実用的なアルゴリズムの研究を行った.このクラスは典型的な多極大域的最適化問題として知られているが,問題の特殊構造を利用することで理論的にも実用的にも効率のよいアルゴリズムの設計が可能なことを示した.主な結果は以下の通りである. 1 有効集合上で線形関数を最大化する問題を研究した.この問題は多目的意思決定に関する問題であるが,多極大域的最適化に属する.目的の数が3つまでの場合,この問題が低ランク乗法計画問題と同様の方法で効率的に解決できることを示した. 2 凸多面体上で複数のアフィン関数の積を最小化するための分枝限定法で有限収束の保証されるアルゴリズムを開発した.目的関数は対数を取れば凹関数の和に分解されるが,この特殊構造を利用し,下界値強化のために限定操作を2段階で行う矩形分枝限定法を提案した.計算実験の結果は,このアルゴリズムが極めて効率のよいことを示している. 3 線形比の和を凸多面体上で最小化する問題は乗法計画問題の重要な部分クラスである.この問題を解くために矩形分枝限定法を開発した.比の数が多くの応用では高々10程度であることから,分枝操作を比の値のベクトル空間で行うこととした.その結果,既存のアルゴリズムを用いるよりも遥かに効率よく大域的最適解の得られることが判明した. 4 乗法計画問題を分枝限定法で解く際に,線形・二次計画問題を反復して解く必要が生じる.したがって,線形・二次計画問題を解くための手続きはアルゴリズムの効率に重大な影響を及ぼす.そこで,これらの問題クラスである線形相補性問題を解く反復解法について研究し,その最悪計算量を明らかにした.
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