研究概要 |
近年,数理計画の分野において新しい再定式化の考え方に基づくいくつかのアプローチが提案され,注目を集めている.再定式化とは,一般に,解くべき問題を何らかの取り扱いやすい問題に変換し,さらにその問題に対して効率的なアルゴリズムを適用することを目指したものであり,ペナルティ関数法はその古典的な例である.現在では,再定式化が対象とする問題は多岐にわたっており,単に最適化問題に止まらず,より一般的なクラスの問題である相補性問題や変分不等式問題のような,いわゆる均衡問題にまで及んでいる.また,それらの再定式化の多様化に相まって,微分不可能な関数に対する様々な平滑近似法や微分不可能関数を直接取り扱う一般化ニュートン法などの方法が提案され,数学的基盤が整いつつある. このような背景のもとに,数理計画のいくつかの重要な問題とそれに関連する問題に対して,新しい再定式化の方法を確立するとともに,より有効性と拡張性に優れたアルゴリズムを構築することを主な目的とした研究を行った.本研究において得られた成果は次のようにまとめられる. 1.相補性問題・変分不等式問題に対して,正則化ギャップ関数,Fischer-Burmeister関数,D-ギャップ関数などを用いた再定式化の方法を開発した.さらに,様々な応用をもつ重要な問題である,均衡制約を含む数理計画問題(MPEC)に対する新しい再定式化手法の開発を推進した. 2.再定式化によって得られる問題は,例えばsemismooth性のようなある種の微分不可能性を有している.本研究では,微分不可能関数を含む問題を微分可能な問題に再定式化するための平滑化関数(smoothing function)を提案し,さらに,再定式化によって得られた問題に対する効率的なアルゴリズムの開発を行った.
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