研究概要 |
平成11年度は,比較的規則正しく波板状に折り畳まれ,単葉で羽状脈系を持つイヌシデとハンノキの葉の展開様式の違い(前者は平面的な展開様式,後者はV字状の展開様式)に着目し,葉の大きさや葉脈角が同じであれば,葉が完全展開するまでに要する運動エネルギーの総計には大きな差がなく,その原因が,主に,葉を構成する葉身と葉脈の厚さが異なることに起因する折れ線間隔比の違いにあることを明らかにした. 平成12年度は,掌状脈系に沿ってジャバラ状に折畳まれたヤマモミジの葉について,展開過程の観察や,葉脈角や葉脈の長さ,葉身要素の面積分布等の形状計測,葉脈や葉身の引張試験,さらに,これら基礎計測を基に構築された数値展開モデルを用いた数値展開シミュレーションを行った.これらの計測やシミュレーションから,モミジは,折畳み時に,太い葉脈が重なり局部的に厚みが増加するのを避けるよう,葉脈角を微妙に調整していること,展開時の運動エネルギーは展開初期に最大となり,展開の進行につれて次第に減少し,最終段階では初期の5%以下になること,全運動エネルギは,葉身形状に依存し,葉脈間の葉身の切れ込みが小さい形状の葉ほど小さくなることが明らかになった. 平成12年度のもう一つのテーマは,ハート型の比較的広い葉身を持ち,葉の両サイドから巻き込むように畳まれているフキの葉に関する研究である.平成12度は,フキの葉の展開様式を考察するための基礎資料となる葉身や葉脈の形状計測,葉脈分布パターンの決定,葉身や葉脈の力学的特性の解明に焦点を絞って研究を行った.その結果,フキの葉の葉脈の剛性は葉身の約11倍あり,葉脈は葉身の支持部材として適していること,広い面を確保する構造としては,平面を維持する部材とそれを支持する部材からなる複合構造が効率的であること等が明らかになった.
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