研究概要 |
骨が力学的環境に適応しその構造,特性を変化させる現象は骨の力学的リモデリングと呼ばれる.本研究では,時刻歴変化の表現が可能な骨リモデリング構成式を定式化し,その記述精度,妥当性について検討を行うとともに,定式化したモデルの汎用有限要素法プログラムへの組み込みの適用性を検討した.その成果は以下のようにまとめられる. 1.力学的刺激の蓄積・伝達過程を内部状態変数により表現することで時刻歴変化を記述できる単軸数理モデルを定式化した. 2.この単軸モデルは,文献から得た実験結果を精度よく記述できることが分かった.また,このモデルは,負荷履歴非依存の挙動を示すことを確かめた. 3.単軸モデルを多軸に拡張し,さらに過負荷による骨吸収を表現できるように改良した. 4.過負荷による骨吸収を考慮したモデルは,臨床的にみて妥当な負荷履歴依存の挙動を示すことを確かめた.すなわち,リハビリテーションやトレーニングの問題へ適用できる可能性がある. 5.定式化したモデルの汎用有限要素法プログラムへの組み込みの適用性を検討するため,3次元6面体有限要素1要素からなる有限要素モデルに対し,構成式定式化の際に用いた実験結果と同じ負荷履歴を与え,その再現性を確認した.その結果,定性的にほぼ一致する結果を得,組み込みは妥当性であると判断した. 6.このモデル大腿骨近位部の有限要素モデルに適用し,骨梁構造を表現できるかどうかを検討した.その結果,このモデルにより骨の最適構造を予測できる可能性が示された.
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