研究概要 |
連続繊維で一方向強化した金属基複合材料や高分子基複合材料では,繊維がまったくクリープしなくても,破断繊維内で応力緩和が生じ,複合材料としてのクリープ破断が起きる.本研究では,このような破断繊維内応力緩和現象をレーザラマン分光法により実験的に検討するとともに変分原理に基づく解析的検討を行い,次の知見を得た. 1.単繊維モデル試験片の一定荷重下での繊維プルアウト試験を行うことにより,繊維中の応力分布に及ぼす母材クリープの影響を検討した.繊維応力分布の測定はレーザラマン分光法で行った.この検討を3種類の母材(通常のエポキシ,フレキシブルエポキシ,アクリル)に対して行った結果,母材クリープが著しいほど繊維応力分布の時間変化が速く進行することがわかった. 2.単繊維モデル試験片における破断繊維内応力分布の時間変化を同じくレーザラマン分光法で行った.この試験でも母材クリープが著しいほど繊維応力分布の時間変化が速く進行することがわかった. 3.軸対称繊維引抜きモデルと繊維破断モデルを考え,繊維応力分布に及ぼす母材クリープの影響を解析するための変分法を構築した.この変分法では,まず速度形の補足エネルギーに基づく汎関数を提示し,その停留条件としてシアラグ方程式が得られることを示した.次に,繊維内応力分布の2直線近似を汎関数に代入し,停留条件より解析解を導いた. 4.このような解析解を本実験結果に適用した.母材クリープの材料定数は引張クリープ試験結果より同定した.この結果,本解析解は実験結果の傾向をよく表すことがわかった.
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