研究概要 |
不均質な力学的挙動を解析する手法を構築するために,主に溶接熱影響部の室温および高温における微視的変形挙動を実験的・解析的に検討した.得られた成果は以下のとおりである. 1.溶接熱影響部の強度測定・・・熱影響部には結晶粒径が細粒化している部分と粗粒化している部分が形成されるが,Mod.9Cr-1Mo鋼では細粒部の硬さが小さく,通常観察されるホール・ペッチの関係が成立しないことがわかった.これは,HAZ形成時の溶接での複雑な熱履歴が影響していると考えられる.今後,さらに数個の結晶粒レベルでの微視的な領域の変形を計測する必要がある. 2.多結晶体のモデル解析・・・AsaroとNeedlemanによって提案された単結晶に関する構成式を有限要素法に導入することで,多結晶体を模擬的に再現する手法を構築した.その結果,粒径が大きい領域のひずみのバラツキが大きいことが示され,実験と定性的に一致することを確認した.熱影響部の変形を記述するためには,粒径によって流動応力を支配する材料パラメータを変化させる必要があることがわかった. 3.粒界すべりのモデリングと解析・・・接合要素を用いて結晶間のすべりをモデル化した.その結果,粒界の導入によって,粒内のひずみのバラツキがさらに顕著になることがわかった.この成果は,高温における粒界き裂の発生やすべりのモデルの基礎として適用可能であることが示された. 4.異方性軸の自己適応モデルの提案・・・外部からの力学的条件によって異方性軸が変化するモデルを構築した.このモデルは,一方向強化複合材料のマクロな挙動だけでなく,さらに不均質性が時間とともに変化する生体の自己組織化への適用も期待できることが示された.
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