研究概要 |
本研究の目的は、低速域から高速域、さらにはひずみ速度で1×10^4/s以上の超高ひずみ速度域でみられる鉄の大きな変形応力のひずみ速度依存の機構を調べることにある。 まず,超高ひずみ速度(〜5×10^4/s)を達成できる高速圧縮試験装置を考案した.本装置は,良く知られたホプキンソン棒装置から入射圧力棒を取り除き,出力棒端面に接着された試験片を打撃棒が直接圧縮変形するシステムである。 実験は,主にひずみ速度4×10^3/sから5×10^4/sの領域を中心に行った。さらに、広範囲ひずみ速度域における変形応力のひずみ速度依存の機構を調べるために、ひずみ速度100/secならびに準静的領域における変形応力の測定も行った。また、高ひずみ速度域における変形応力が瞬間のひずみ速度に依存しているか、それともひずみ速度履歴に依存しているかを調べるために、ひずみ速度1×10^4/sから2×10^4/sの間で速度急変実験を行った。その結果、変形応力に対しては瞬間ひずみ速度の影響が支配的であることが明らかとなった。さらに,鉄の高ひずみ速度域における変形応力のひずみ速度依存の機構を,既に得られている信頼できる鉄の活性化エネルギーE(τ)を用いて比較、検討した.その結果,準静的領域における変形は運動転位と林転位との切り合いによって律速されており、またひずみ速度l/s程度の低速域からひずみ速度およそ2×10^4/sの間の変形応力のひずみ速度依存の機構は転位がキンク対を形成する際の単一の熱活性化過程で表すことが出来る。しかし、それ以上の超高ひずみ速度領域においては,変形応力の急な上昇をそれ以下の領域における律速機構で表すことは出来ず、他の機構が支配的になるのではないかと考えられる.
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