研究概要 |
現在,工業用ロボットが比較的高い精度を要求される現場で用いられており,その静的・動的な運動性能を評価することは非常に重要な課題となっている.本研究では,被測定物にターゲット(レトロリフレクタ)を取り付け,2台の2自由度レーザトラッキング機構によりレーザ光の方向を制御してターゲットを追尾する.そして,三角測量の原理に基づいて,レーザ光の方向ベクトルからターゲットの空間座標を算出する.この方法は,角度の変化を測定する方式であるため,測定基準点から対象物までの距離が大きくなるほど角度誤差の影響が大きくなるので,レーザトラッキング機構の位置決め精度はシステムの測定精度に大きく依存する.そこで,広範囲の位置決めが可能な粗動トラッキング機構と微小範囲の高精度な位置決めが可能な微動トラッキング機構を組み合わせた粗微動レーザトラッキング機構を提案する.昨年度までに,高精度割出し盤を利用した粗動トラッキング機構と,圧電素子で駆動される超高精度微動機構を組み合わせた粗微動トラッキングステーションにより,静的な1次元座標測定を行った.トラッキングステーションから1000mm離れたところでの1次元の静的な測定精度は標準偏差σ=6.9μmであった. 本年度は,ターゲットとなるコーナキューブの特性評価を行った.コーナキューブの陵部のレーザ光散乱によって,反射レーザ光強度の絶対値の低下,およびPSD上でのスポット位置のばらつきが確認された.これは,意識的にコーナキューブの陵部を使用しないことで対応した.また,ミラーとターゲットまでの間隔Lの自己校正を行った結果,L=1000mmに対して,0.35mmの誤差で自己校正できた.また,レーザトラッキングユニット座標系とターゲット座標系間の相対関係を自己校正することもできた.この結果,本手法の実用化の可能性を見いだした.
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