研究概要 |
本研究では,まず,バーチャル・エンタプライズ(VE)について基礎的検討を行い,一つの製品を製造販売するサプライチェーン(SC)においてメンバーシップを獲得することによりVEが形成されると考えた.さらに,多様な活動主体がメンバーシップを獲得するために,どのような情報や提案を提示するべきか,またそれらに基づいてどのようにして相手を選択すべきかについて検討し,その合意形成の過程について考究し,以下のような二つの観点にたつモデルを考えた. (1)合意形成過程を製品の販売側から上流に向かって順にメンバーを確定 (2)SC全体に対して強い力を有するリーダーを考え,その元でSCを形成する さらに,上記の(1)のモデルについて,さらに検討を進め,以下のような成果を得た. 1.バーチャルエンタプライズの合意形成プロセスモデルの構築 企業間の合意形成過程を製品の販売側から上流に向かって順にメンバーを確定していく上記(1)の形でモデルの構築を行った.各企業をエージェントとしてとらえ,企業間の交渉プロトコルとして,契約ネットプロトコルを用い,市場の特性を入札のタイミングで表現したオークション型のモデルである.このモデルを用いて,合意形成過程について以下のような分析を行った. 2.各企業の交渉戦略の違いによる合意形成過程の分析 交渉時の効用特性に基づく企業のタイプとして,利益の増大を優先する利益追求型,在庫の削減を優先する在庫削減型の2つを考える.これらの特性を持つ企業でモデルを構成し,シミュレーション実験により,企業の戦略とVEの特性との関係について,以下のような解析,考察を行った.・VEを構成する企業のタイプが利益追求型の場合,および在庫削減型の場合における企業の利益,在庫資産に対する利益率(ROA),在庫量などへの影響・契約の確定を上流から行う場合,下流から行う場合,さらに,独立に契約を確定する際における特性の差異 これらの分析により,契約ネットプロトコルを用いたバーチャルエンタプライズの合意形成過程のメカニズムを明らかにすることができた.
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