研究概要 |
シリコンの異方性エッチングを用いると微細な規則形状を容易に得ることができる.シリコンはぜい性材料ではあるものの機械的特性に優れるため,微小しゅう動機構等への応用が考えられる.しかし,寸法の微小化に伴ってすべり接触部における表面吸着力が大きくなり,ひいては摩擦力の影響が無視できなくなるため,その低減・制御が必要となっている.そこで本研究では,表面の吸着力特性を実験的に明らかにするとともに,表面に微細規則形状(テクスチャ)を作成することで摩擦係数を低減すること等を検討した. シリコン表面の濡れ性や雰囲気を変えながら表面吸着力の特性を評価した結果,真空環境下では大気環境下よりも表面吸着力が小さくなるとともに,測定される吸着力のばらつきも減少する傾向があることがわかった.吸着力の主な原因は二面間に介在する水分子が架橋(メニスカス)を形成しているためと考えられ,表面の濡れ性を減少させることで表面吸着力を減少させることができることがわかった. また,異方性エッチングによってテクスチャを作成する方法を検討し,その設計指針を明らかにした.基板面方位を適宜選択し,ライン・アンド・スペースのマスクパターンを施してエッチングすることで,対称および非対称V溝が平行して並ぶテクスチャを作成することができる.これをすべり面に適用したとき,接触面圧が小さい場合に見られる動摩擦係数の上昇が大幅に抑制できることがわかった.この効果はテクスチャ面同士,またはテクスチャ面-平面の組合わせによっても同様に得られた.摩擦係数低減の理由は,テクスチャによって真実接触面積が減少したためと考えられる.さらに,テクスチャ面とヤング率の低い材料を組合せたとき,しゅう動方向によって摩擦に変化(方向性)を付与できることがわかった.
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