研究概要 |
本研究では,弾性ヒンジを用いた圧電アクチュエータ用の変位拡大機構について研究し,小型で,高い拡大率を有する高精度な位置決め機構を実現することを目的としている.まず始めに新しい1自由度変位拡大機構を提案し,その特性を検討した.1自由度機構については,弾性ヒンジ部とリンク部の形状などを如何にすれば高拡大率が得られるかを主として有限要素法による計算によって明らかにし,機構を実際に試作して,機構の静特性,動特性を実験的に調査した.機構の設計では,ヒンジ形状,リンク形状,設定位置,材質等に対する系統的なデータをFEM解析により調査し,複数の弾性ヒンジ同士の相対的位置関係を適切に決定した. また,圧電アクチュエータを用いた1自由度差動型変位拡大機構の簡易拡大率計算法について検討した.差動型変位拡大機構を剛体要素と弾性ヒンジ要素の連結構造体として取り扱い,伝達マトリックス法を用いて変位拡大率を計算した.有限要素法解析による高位近似解と比較検討し,充分に実施利用可能な精度を得,機構の変位拡大率の簡易設計法を確立させた. さらに,3自由度機構を設計製作した場合の特性について3次元有限要素法解析により推定した.提案した3自由度機構は,試作した1自由度機構を3個使用し,テーブルを平面内3自由度(すなわち水平2方向の並進2自由度と垂直軸まわりの回転動作1自由度)で動作させる機構である.解析モデルではテーブルと各1自由度機構とは弾性ヒンジにより連結するものとし,静特性,動特性を調査した.その結果,1自由度機構単体の時に比較して,変位拡大率が3割程度低下すること,2方向の並進運動の間では駆動したい方向に対して4%程度の干渉移動量が生じること,回転動作に対してはほとんど干渉が生じないことなどを明らかにした.
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