研究概要 |
転がり軸受の外輪と円筒軸ならびに転がり軸受の内輪とねじ軸との転がり接触を利用したフリクションドライブ・スクリューが開発され,実用に供されている.これらの送りねじの性能をボールねじの場合と比較すると,スラスト方向の許容荷重,剛性,位置決め精度が劣る反面,高速性,静寂性に優れる等の特長を備えている。しかしながら,現在のところ国内外を問わず,この種の転がりねじを取り扱った研究報告はほとんど見当たらない.本研究では,転がり軸受の外輪と円筒軸が接触する形式のフリクションドライブ・スクリューを対象として,駆動性能を明らかにした上で,転がり軸受と円筒軸間に設定するリード角(ねじれ角)を任意に変化し得る機構を開発し,駆動軸の回転速度とは無関係に,送り速度を任意に変化したり,駆動停止や駆動方向反転を実現することを目的としている.可変リード式フリクションドライブ・スクリューを開発し,その駆動性能試験を実施した結果,以下の結果が得られた. 1)フリクションドライブ・スクリューのリード角変化機構を容易にするために,リニアベアリングと転がり軸受(ラジアルベアリング)をシリアルに組合せることにより,駆動軸とテーブル(本体)との間のねじ運動を実現するための機構を考案し,その有効性を確かめた. 2)リード角を変化するのに要する,駆動軸とドライブ用転がり軸受間の摩擦モーメントに関する数値解析を行った. 3)試作した可変リード式フリクションドライブ・スクリューの性能試験を実施したところ,リード角-20゜〜20°の範囲において,スムーズなリード角変化が実現した. 4)リード角0°の保持が可能であり,駆動軸を回転させたままテーブルを静止することができた. 5)超音波モータ駆動プログラムを用いて,駆動軸を回転させたまま,任意のストローク間における連続往復運転および加減速運転を実現した.
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