研究概要 |
本研究は,軸流中で高速回転する円筒上に発達する捻れた乱流境界層において,壁面せん断応力を計測することを目的としており,この壁面せん断応力を,レーザ計測,微小熱線,壁面トレーサ,ヒートトレーサ,運動量積分方程式,等の方法により計測しようとするものである。 測定に使用した熱線は直径3μmのタングステン線で,微小なI型プローブを回転する方法とV型プローブを併用した。実験は,全長1200mmの回転体が静止している場合と,速度比(円筒周速度/主流速度)が1の場合の乱流域のほぼ全域について行った。これらの微小熱線による壁面近傍の速度の測定結果に対して,バッファーフイッテイング法を適用し,壁面せん断応力を評価した。この値をこの乱流境界層の運動量積分方程式と比較したところ,比較的良好な一致を見た。運動量積分方程式から壁面せん断応力を求めることについては,不確かさ解析の結果,少なくとも一測定断面で10回程度の測定を繰り返すことにより,精度の良い測定ができることを明らかにした。レーザ計測による壁面せん断応力の計測は,壁面近傍の速度勾配を計測する方法で,一つは光学系を回転体に組む込むもので,これについてモデル実験を行っている。いま一つは外部静止系から回転体壁面近傍の速度勾配を検出するもので,その光学系を試作している段階である。つまり,軸流中で回転する円筒上の流れに対しては,レーザによる方法の研究は現在継続中である。また,壁面トレーサ,ヒートトレーサによる壁面せん断応力計測は,高速回転している壁面へのセンサの設置が予想以上に困難で,この方法による精度が上記の方法を凌駕するものでない限り,利点はないと判断された。
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