研究概要 |
水平に置かれた円柱の側壁に沿って周方向に流下する液膜表面には,周方向に波の峰線をもつ筋状の定在的な波が発生する.この波の振幅は下流方向に増幅し,ある位置でその一部が液膜からちぎれてはく離する.本研究では,定在波の挙動について,理論的,実験的に検討を行った. 波の発生位置では,作用する遠心力,重力,表面張力および粘性力が釣り合うと予想される.この釣り合いから,定在波の波長を求める方程式を導出した.得られた波長の値は,実験値と良い一致を示した.発生位置より下流では,液膜が加速され遠心力が増加するため,上記の各力に不釣り合いが生じる.その結果,波は下流方向に増幅すると考えられる.この観点から,振幅の増幅率に関する一つの運動方程式を導いた.この式を解析することにより,波の増幅は主に重力と慣性力によって決定され,表面張力の影響はないことを示した.理論的に算出した増幅率は,触針法による測定波形から求めた値と大体一致した.次に,波の一部がちぎれる現象について,一つの力学的なモデルを提案した.波の増幅に伴い,波山部内を流れる流量が増加するが,その増分は周囲の谷部から供給される.谷部から壁面に平行に流れた液体は,山部根元で方向を壁面に垂直なy方向に変え,山部内へと供給される.このy方向への運動量は,液体に作用する遠心力,重力および表面張力の合力の結果として与えられる.波の振幅がある値以上になると,振幅の増幅に必要な液体流量に相当する運動量を,これらの力で賄うことができなくなる.その結果,山部根元にくびれが生じ,波の一部がちぎれてはく離すると考えられる.この条件に基づいて理論的に求めたはく離位置は,目視および写真撮影による実験結果と良い一致を示した.
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