研究概要 |
水圧駆動装置に用いる水の清浄度を管理するための理論的及び実験的研究を行った.理論研究では,流体駆動装置一般におけるフィルタの動作を表現する基本的な数学モデルを作った.実験では水圧駆動に使うフィルタ特性の測定法の検討と水圧駆動系内の微生物調査を行った. 理論研究において提示した数学モデルにより,これまでに観測されていた次の現象を説明することができた. 1)シネテムに一定の割合で汚染要因物が侵入するとき,フィルタ上流の粒子数濃度は,ゆっくり増加する時間の一次関数となり, 2)下流は増加速度の速い一次関数となる. 3)フィルタにおける圧力損失は時間の指数関数として増加する. 油圧フィルタの性能表示はβ値に代表され,ISO規格はこれをフィルタの性能表示に使っている.本研究により,βはフィルタ固有のパラメータではなく,フィルタの状態を示す変数であることが示された. 実験では,微粒子計数法の検討,水圧用のマルチパス試験装置の試作と実験及び水中微生物の測定を行った.その結果,微粒子の計数は,油圧用に用いられてきた自動微粒子計数機を使用するととができることがわかった.本研究では,顕微鏡像を画像処理して計数を行う場合には,試験用微粒子は,色の揃った不透明なものが良い. フィルタ性能の測定装置は,水圧の場合には,油圧とは異なる点に重点がおかれる.油圧用のマルチパス装置で重要な,回路のクリーンアップは,水圧では洗浄した水を排出できるので,不要となる.しかし水圧では粒子の沈降速度が速いので,これに対する対策は,油圧の場合よりも厳しくなる. 微粒子汚染を防ぐという点で,水圧駆動における水の管理と油圧駆動における油の管理とは共通している.しかし,油圧では酸化など化学的観点からの劣化に注意を払わなければならないのに対し,水の場合には,これに代わって微生物増殖防止が課題となった.
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