研究概要 |
本研究は塩化カルシウム水溶液内の水平氷層が下面または上面からの自発的に融解する問題について数値解析と実験を行い、速度場、温度場、濃度場のそれぞれについて考察すると共に、融解系の急激な温度降下や融解量を定量的に検討したものであり、その結果を要約すると以下の通りである。 (1)下面融解の場合は,濃度勾配を駆動力とする自発的な氷板の融解による潜熱の吸収により融解面の温度が降下し、その結果液層内の上下に温度差が生じ、温度差支配の自然対流が発生した.この対流によって,濃度の濃い水溶液が融解面近傍に輸送されるものの,融解速度は比較的に小さい値であった.これは融解面近傍に濃度の薄い融解液が蓄積停滞し濃度拡散層が現れるからである.つまり融解の駆動力はこの拡散層内の濃度勾配であるので,この層が時間経過とともに厚くなって,融解速度の低下の原因になったと考えられる.融解量の測定,液層内の対流の可視化観察結果から本数値解析は実験の傾向を比較的に良く予測することができた. (2)上面融解の場合は,氷板が融解している融解面近傍の融解液濃度は大変薄いので密度はかなり小さくなって,融解面近傍では大変大きな濃度差浮力が働き流動の激しい小さな乱れた渦がたくさん発生しているように思える.このため,液層内全域も乱れた対流挙動を示し,融解量は下面融解と比べで約2倍程度の多くの融解量が認められた.融解終了後の融解面を観察した結果,1mm間隔の多数の鮫肌のような凹凸現象が観察された.これは融解が促進された結果であると思われ,これが如何なる物理・科学的な挙動に基づいて現れたのか,今のところ的確な説明がつかない.層流の仮定に基づく本数値解析はこのような融解促進挙動を予測できず,実験結果よりも小さな融解量を予測するにとどまった.今後,詳細な融解実験を行って,この融解促進効果を解明したいと思っている. (3)2次元による数値解析結果と3次元による数値解析結果を比較した.流れ模様には2次元と3次元の特徴が現れたが,融解量に関しては,両者にほとんど差が見られなかった.したがって,融解量を予測するには計算時間の短い2次元計算で十分であると考える.
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