研究概要 |
本研究の目的は,液滴の加熱面衝突時において遷移沸騰域で認められる多数の微小な液滴が大気圧雰囲気中へ激しく飛散する微細化現象を明らかにすることにある.特に液滴と加熱面間に生成された薄い蒸気膜が崩壊して固液接触を起こし,そこで発生する微小気泡(マイクロバブル)の発生挙動をとらえ,微細化の機構と関連づけようとするものである.これまでに使用した石英加熱面では核沸騰的な挙動が高温域まで続き,激しい微細滴の飛散現象が顕著に認められなかったため,サファイア円板,ガラス面に薄く導電性皮膜を施したITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウム スズ)皮膜面及び石英面に薄くクロム皮膜を施した面を加熱面として使用し,それぞれの面上での沸騰挙動を各裏面から高速度カメラでとらえ,石英面と比較した. 1.ITO皮膜面及びクロム皮膜面での核沸騰域(加熱面と液膜とが十分に濡れた状態下の沸騰)の蒸発寿命特性は石英面でのデータと類似している.これに対して熱物性値が石英の4.9倍に相当するサファイア面では加熱面温度範囲は低温側に移行し,金属面での寿命特性に接近している. 2.ITO皮膜面上での沸騰挙動に関して,核沸騰域では,液膜内に微小な蒸気泡の発生とみなされる白い斑点が多数観察された.これらの白い点は液膜の中央部から放射状に周辺部へ速い速度で移動しているのが判明した. 3.サファイア面上での沸騰挙動に関しは,加熱面温度が320℃以下では,激しい核沸騰的な比較的大きい蒸気泡の発生が認められたが,370℃以上では薄い蒸気膜が生成されその上に液滴が存在すると言った状況が確認でき,液膜の表面から放射状に微小な液粒子の速い飛散が認められた. 4.クロム皮膜面では450℃を越えると,分裂した液滴の一部が加熱面と薄い蒸気膜を介して接触を保つようになり,その蒸気膜の崩壊時に爆発的な微小液粒子の飛散が生ずることが確認できた.これを誘起するものはマイクロバブルであり,これは薄い蒸気膜崩壊に伴う固液接触時に生ずることが判明した.
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