研究概要 |
過冷却水中に氷核が発現する過程について,分子動力学法を用いたシミュレーションおよび異物質混入による実験を行い,過冷却水の凝固を制御する上で重要な研究課題の一つである、不均質核生成と異物質表面の分子配置・表面形状との関係および氷核発生温度の予測方法を明らかにした.研究実績の主な内容は,以下の通りである. 1.分子動力学法を用いたシミュレーションにより,水の不均質核生成現象を原子レベルで検討した.系は面心立方格子(111)面を固体表面とし,その上に水分子を配置した.水分子間にはST2モデルを,固体-水分子間にはSpohrらによる白金-水間の式を用いた.計算は,粒子数,圧力,温度一定の条件で行った.温度は,そのモデルにおける弱過冷却状態(275K)とした.その結果,平滑面では水分子が壁原子に吸着するのみであるが,表面を加工することにより氷核生成が起きることが分かった.また,固体-水分子間ポテンシャルを変化させ,水の双極子モーメントの総和が反強誘電性を持つ形にすることにより,結晶成長を促進させることができた.さらに,固体の格子間隔が核生成に与える影響についても解析を行い,氷核生成に有効な物質について考察を加えた. 2.3種類の異なる大きさを持ったヨウ化銀粉末を水に混ぜることにより,不均質物質の影響を検討する凝固実験を行った.その結果,従来整理に使われていた不均質物質の重さではなく,表面積が関係していることが分かった.そして,単位表面積当たりの核生成能力は,統計的な処理を行うことにより予測可能であることを示した.また,表面の濡れ性との関係についても明らかにすることができた.
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