研究概要 |
動物の歩行には静歩行と動歩行があるが,静歩行は静的に安定な状態を維持しながら脚を移動させる歩行で容易に実現できる.一方,動歩行は,静的に不安定な状態が存在する歩行で,動歩行ロボットの本格的な研究は1970年代に始まった.それまでの研究は,静歩行ロボットに関するものが中心で,動歩行という言葉は研究代表者の江村が用いたのが最初かと思う.江村は,足の裏面の曲率半径よりも重心の高さの方が高く,制御なしでは転倒してしまう竹馬型2脚ロボットを1972年に試作した.この竹馬型ロボットを用い,ロボットの姿勢を動物の半規管と同じ構造の姿勢センサで検出し,ロボットの股関節に与えるモーメントを制御しながら平地を安定に歩行させることに成功し,この研究成果を発表したときに動歩行という言葉を用いたのである. 動歩行を用いて安定な歩行を実現するには,制御上の多くの問題を解決せねばならない.当研究室では,14自由度の人型2脚ロボットと12自由度の4脚ロボットを試作し,水平面については,安定な歩行が実現できるころまで研究が進んでいる.しかし,起伏の多い荒れ地を想定した可変傾斜面上での動歩行についてはこれからである.それ故,2個のモータで傾斜角が直交2軸の回りに時々刻々可変できる可変傾斜面型のベルトコンベヤの試作を行い,この可変傾斜面型ベルトコンベヤ上で,2脚・4脚ロボットの安定な動歩行を実現するには,どのような制御上の工夫が必要かを調べるのが本研究の主な目的となる. 平成11年度は,可変傾斜型ベルトコンベヤ上での動歩行を可能とするために,既存の2脚ロボットと4脚ロボットの足首部の改造,ならびに関節角を直接エンコーダで検出するための改造等を行った.可変傾斜面上での動歩行を実現するには,現在実験に使用している2脚ロボット,4脚ロボットとも,足首部の強度やモータトルクが不足するため,十分な強度を有する足首部を新たに設計製作するとともに,モータ出力の増大を図るための造を行った. 平成12年度は,足底と床面との摩擦力不足により,2脚ロボットが歩行中に進行方向が変化することを避けるため,腕を製作して取り付けた.また,実際に歩行実験を行い進行方向の修正に腕が有効に機能することを確認した.さらに,改造した脚ロボットを可変傾斜面上で歩かせる実験を行い,安定な歩行を行わせることに成功した.これは,優れた成果である.
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