研究概要 |
薄板構造物をローラではさみ局所的な圧延を施すと,薄板構造物には残留応力が生じ,振動特性が変化する。本研究では,この方法を利用して薄板構造物の振動特性を最適化する方法について検討した。特に,最適な圧延条件を実験的なアプローチではなく,計算機援用による最適化問題として扱う方法の開発に主眼をおいた。薄板構造物の具体例として,木材の切断加工に広く用いられている丸のこを取り上げた。 1.丸のこの最適ローラ圧延条件の探索法 最適化手法として傾斜投影法を用い,回転する丸のこの最小後進波振動数を最大化する圧延条件(圧延位置,圧延量)を探索し,決定するアルゴリズムを提案した。丸のこを一様厚さの円板と仮定し,その回転数を変化させ最適圧延条件を求めた結果,次のことが明らかになった。 (1)最適なローラ圧延は,回転円板の最小後進波振動数を大幅に上昇させる。 (2)円板の回転数により,回転円板の最小後進波振動数を最大化する圧延位置と圧延量が異なる。 2.ローラ圧延された丸のこの固有振動数の簡易推定法 圧延条件変更後の振動特性を算出する際の計算負荷を低減するために,ローラ圧延された丸のこの初期応力剛性行列と固有振動数を簡易に推定する方法を提案した。提案した方法は,圧延後の初期応力剛性行列と固有振動数を初期条件において算出した初期応力剛性行列と圧延前の振動特性だけから応力解析と振動解析なしで推定する。圧延条件を変えて円板の固有振動数を推定した結果,次のことが明らかになった。 (1)圧延量が小さいときは,1次元固有値問題で圧延後の固有振動数を精度よく推定できる。 (2)圧延前後の振動モードの変化が大きいときには,多次元の固有値問題を解く必要があるが,その場合でも固有値解析を必要としない小次元の固有値問題で十分である。これは,圧延後の振動モードが同じ節直径数で異なる節円数の圧延前の振動モードだけで表せるからである。
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