研究概要 |
機械工学の分野で数多く見られる接触回転系においては,運転中に構成要素の変形が自励的に成長するのに伴って系全体に大きな振動が発生し,ロール等の接触表面に周期的な変形パターンが形成される現象がしばしば生じる.このようなパターン形成現象に対する従来の解析法は,発生メカニズムを線形時間遅れ系の不安定振動に起因するものと捉えて特性根によりその安定性を判別しようとするものであるが,時間遅れ系の場合には1自由度系においてさえも特性根が加算無限個存在するのが特徴であり,多数の特性根を求めない限り系の安定性に関して確定的な議論ができないという難点がある.しかも,そのためにはかなり面倒で多量の数値計算を必要とするにもかかわらず,得られる結果はそのまま防止対策に役立つような形になっていない.このような解析手法上の難点の克服を目指して,研究期間内においておもに次の項目について研究を行った. 1.モード解析法の概念とエネルギー収支の観点とを導入することにより,多自由度系に対してモード毎の不安定度を表すエネルギー指数の概念を新たに導入した.さらに,このエネルギー指数を利用することにより,特性根を求めることなく少ない計算量で見通しのよい防止対策の指標が得るような発生危険度簡易推定法および防止対策のための最適設計法を新たに開発した. 2.新たに開発した発生危険度簡易推定法および最適設計法を,パターン形成現象の発生事例の中から抄紙機の多段ゴムロール系の多角形化現象,およびより大規模な自由度を有する系の代表例として回転軸の長手方向の曲げ振動を考慮した場合のゴムロール系の多角形化現象の解析に適用して,本手法の有効性について詳細な検証を行った.その結果,本手法は従来の手法に比べて,多自由度系に対しても精度を悪化させることなく極めて効率的に防止対策のための設計を行い得ることが明らかになった.
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