研究概要 |
振動を抑制するには粘性ダンパーによって運動エネルギーを消費して減衰効果を得るのが普通であるが,ポテンシャルエネルギーを消費して減衰効果を得ることも当然考えられる。構造系の振動では,後者のタイプのダンパーは実現困難であるが,流体系の振動では,流体自身が任意に変形し,移動しうるので,ポテンシャルエネルギー消費型ダンパーが実現可能であると考えられる。本研究では長方形容器内のスロッシングを対象として,液面の高まりによるポテンシャルエネルギーの一部を運動エネルギーに変換しない方式を用いて,ポテンシャルエネルギー消費型ダンパーの特性及び実用性について研究するものである。研究成果の概要は次のとおりである。 (1)ポテンシャルエネルギー消費型ダンパーに関する研究の第一歩として,長方形容器のスロッシングを対象として,主系となるスロッシングの基礎式と副室における液面振動との連成振動の数学モデルを定式化した。 (2)副室の減衰効果を数値シミュレーションによって検証した。まず,副室が無いときのスロッシングの共振応答を計算した。次に,逆止弁部の大きさを一定として,副室の大きさと下部放出孔の大きさ(流動抵抗)との関係を調べるために系統的な計算を行った。その結果,設定した副室の大きさに対して最大の減衰効果を与える下部放出孔の大きさが存在することを確認した。これより,ポテンシャルエネルギー消費型スロッシングダンパーの特性が把握され,実用化のための基礎データが得られた。以上の結果をまとめて研究成果報告書を作成した。
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