研究概要 |
定常音場を支配するヘルムホルツ方程式の固有値問題を近似解析する方法の開発が研究の目的である.方法の骨子は極座標表現における解析解を各項とする級数を一般解として,これに選点法を適用して境界条件を近似的に満たすというものである.解は動径方向が球ベッセル関数,天頂角方向がルジャンドル陪関数,方位角方向が三角関数で表される.方位角に対するパラメーターmを固定すれば回転対称空間の解析ができる.この場合,たる形や鼓形など側面の曲率が正負の場合ともきわめて良好な結果が得られた.また,方法の妥当性を検証する意味で検討した直方体や円柱の空間では固有値,固有モードとも100次前後まで厳密解とよく一致する結果を得た.さらに楕円体でも表面上における境界条件の相対誤差が10^<-7>ときわめて良好であった.また,領域形状の任意性が高まる例として稜を丸めた箱形(直方体)については表面上の誤差が数%と大きくはなるものの全体的に妥当な結果であり,十分実用に耐える結果であった.台形体領域については実験との照合も行った.固有振動数は77次までよく一致していた.それ以上についてはむしろ実験値が得られなかったために確認できなかったものである.また,固有モードについてもある断面上で1次,10次,24次,25次,42次を代表例として実験と計算値を比較したところ,いずれも極めてよく一致していた.以上の結果から,提案する方法が基本的には妥当であることが確認されたと考える.ただし,より精度を高めるための方策や吸収性の壁面の扱い方など課題は残されているので継続して検討していく.
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