研究概要 |
ハフティクスインタフェースとは、人間の力覚および触覚を通して計算機との双方向的情報伝達を行うためのインタフェース方式と定義できる.このようなインタフェース方式の重要性は,主にバーチャルリアリティー技術との関連において近年広く認識されるようになってきており,特に最近,情報,医療,生産,スポーツ,アミューズメント等の分野においてその重要性が高まっている.我々は将来の遠隔医療への展開を視野に入れ,高感度・高出力,かつ,小型の簡易型ハプティクスディスプレイを開発した.このディスプレイは,可搬性を保ったまま様々な触力覚提示を行うことを目的としている.また,力覚のみならず物体表面の凹凸のような触感覚提示の実現が可能とされる高速応答性を持っていることから,複合的な触覚提示が期待できる.しかし,単一デバイスによる複数の触情報提示と,複数の触覚情報を効率的に提示するプラットフォームの提案は,まだなされていない.そこで本研究では,数種類の触感覚を管理し,効率的な提示を行える触力覚提示方式を提案し,この方式にもとづいたシステムを構築した.この方式は,触覚情報を物体全体の形状特性と物体表面の特性に分類し,効率的かつ実用的な提示を実現させる.また,情報管理と演算処理を別機構に分離し,様々な用途においても対応できるようにする. 次に,高い振動周波数を必要とする接触時振動感覚提示実験を行った.接触時振動とは,物体接触時に発生しているであろうと考えられる高周波振動のことである.この実験により,高周波振動感覚提示の必要性と,簡易型ハプティクスディスプレイの利用可能性を検証した. 最後に,仮想壁面接触時に必要とされる表面状態提示実験を行い,触力覚提示システムの実現可能性を検証した.仮想壁とは,ソフトウェア的に作成された仮想的な一様平面上に,壁面の触覚情報を貼り付けたものである.なお,本実験ではディジタルカメラによって撮影した画像から触覚情報を作成した. この結果,触感覚の提示において接触時振動の提示が有効であること,本システムにおいて1kHz程度の振動波形を出力可能であること,また,表面状態提示実験において概ね良好な結果を得ることができた.また,パラメータの設定を工夫することでさらに良好な認識・識別が可能であるとの結論を得た.
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