研究概要 |
ロボット・マニピュレータも多くの電力を使用しているので,地球温暖化防止のためにマニピュレータの省エネルギー化は急務な課題である。PTP制御におけるマニピュレータの消費エネルギーは,軌道に強く依存して変わるから,消費エネルギーを最小にする空間経路や動作時間を求めることを研究した。 マニピュレータの関節の可動範囲に制限を付けないで,最適軌道を大域的に探索した結果,リンクを重力方向へ始動し,かつ反重力方向へ制動停止する空間経路を選べば,大幅に消費エネルギーを節約できることが明らかになった。この空間経路を2点境界値問題の初期値として最適軌道を求め,いろいろな場所への物体搬送のシミュレーションをした結果,従来軌道に比べて消費エネルギーが1/30〜1/14に低減できた。また,2点境界値問題は多くの計算時間を必要とする欠点があるので,PTP制御における準最適動作時間を簡便に求める方法を考案した。これによって,リンク数の多いマニピュレータでも簡単に準最適軌道が求められるようになった。 シミュレーションで得られた提案最適軌道を実現するために,2自由度のダイレクト・ドライブ・マニピュレータの第1と第2リンクがそれぞれ360度以上自由に回転できるように改造した。そして,この実験マニピュレータのパラメータを同定した。同定結果を基づいて,最適軌道を実現させる最適電流関数と最適速度関数をオフラインで計算した。この最適電流関数でマニピュレータを動作させた場合,パラメータ同定誤差のために位置決め誤差が生じた。それに対して,最適速度関数でマニピュレータを動作させた場合,位置決め誤差は少なかった。 つぎに,消費電力を実測して,シミュレーション結果と比較検討した。消費電力は,マニピュレータを駆動するサーボ増幅器の入力電力で調べた。その結果,実測消費電力は,シミュレーションの値より30%位大きくなった。この違いは,サーボ増幅器の損失に相当するものである。また,クーロン摩擦力が実験条件によって微妙に変わるためか,実測消費電力値のバラツキが比較的大きかった。 最後に,今回求めた消費エネルギーを最小にする最適軌道における消費電力は,シミュレーション結果通りに従来軌道よりも低減できた。
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