研究概要 |
平成11年度においては,楔形ギャップ付き直交磁心可変インダクタの動作機構の解明を行うとともに,1kVA程度の線形可変インダクタの試作を行った。 直交磁心は磁気特性の非線形性を利用した磁気デバイスであり,さらに,強い磁束分布を有する。このため,通常の磁気デバイス解析手法の適用は困難である。著者は,直交磁心をいくつかの要素に分割し,それぞれの要素を3次元的な非線形磁気抵抗で表す,いわゆるReluctance Network Analysisを考案した。ギャップ付直交磁心の解析に適用したところ,高い精度の特性計算が可能であることが明らかになった。これは最適ギャップ形状などの設計に対しても有用である。 上記の成果に基づいて,1kVA程度の直交磁心形三相可変インダクタンスを製作し,制御特性や制御時の出力電流高調波を測定し,本研究で提案した可変インダクタが本質的に低歪み出力を有し,制御性も具備していることを実証した。さらに,直流側巻線の結線法によっては,出力電流高調波が発生することを指摘し,発生のメカニズムとその対策などを明らかにした。 平成12年度は,前年度に得られた知見に基づき,直列方式高速電圧調整器の実現に必要な事項を明らかにするとともに,簡単な模擬システムにより実験を行った。すなわち可変インダクタを3相の電力系統に並列に接続する場合には,可変インダクタの二次側をデルタ結線すればよい。しかし,直列に挿入する場合にはこの方法が適用できない。本研究では,直交磁心の二次側には主巻線のほかに制御回路用電源のための巻線が施されていることに着目し,この巻線をデルタ結線して第3調波電流を還流させることにより,主巻線電流の第3調波成分の低減を試みた。簡単な仮定に基づく解析と実験を行い,本方式により実用上十分なレベルまで主巻線電流の高調波成分が低減されることを実証し,電力品質の極めて良好な直列方式電圧調整器が実現可能であることが明らかになった。 以上より,本研究の目的はある程度達成されたものと考えている。これらの成果は電気学会,応用磁気学,IEEE国際会議および雑誌等で発表を行った。
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