研究概要 |
本研究では,高調波瞬時無効電力に着目したACサーボモータの磁極位置センサレス制御法を提案し,計算機シミュレーションや実験を通じてその妥当性を検証した。その結果,以下の結論が得られた。 (1)本手法は特定の高調波電流または電圧を注入し,それに対応する高調波瞬時無効電力の位相情報が位置推定誤差に依存する性質を利用している。このため,モータ停止状態から全速度制御範囲で位置推定が可能となる。高調波瞬時無効電力は電機子抵抗の変動に対し本質的に不感であるため,ロバストな位置推定を実現することができる。さらに,フェーズロックトループ技術を適用してこの位相情報を適切に検出することで,モータ速度やインダクタンスの変動に対しても容易にロバスト化できる。 (2)初期位置推定では,最大推定誤差±10.0[mech.deg],3σばらつきで12.6[mech.deg]の推定特性が得られた。また,電機子抵抗の変動時も同等の推定特性であることを確認した。 (3)過渡状態の位置および速度センサレス運転では,200[ms]の速度ステップ応答,800[ms]の外乱応答が得られた。 (4)四象限運転では力行時80[%]負荷,回生時に100[%]負荷まで運転できることを確認した。また,電機子抵抗を25[%]変動させた場合でも同等の特性が得られることを確認した。 (5)推定加速度を利用した外乱補償法や位置推定誤差に対する電流制御系の補償法について検討した。前者については目標値応答が最適となるように設定された速度制御器でも外乱応答が改善されることを,後者についてはd軸およびq軸電流の振動が抑制され速度の応答性や定常特性が改善されることを確認した。 (6)高調波注入時の界磁弱め制御についても検討し,高速領域において高調波成分の飽和対策と出力範囲の拡大を行った。
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