研究概要 |
大気に含まれる有害ガスを放電プラズマにより処理するための各種リアクターが提案されてきている。これまで半導体プロセス等の低圧においては,マイクロ波プラズマなどの高周波放電が主に利用され,その有効性が示されてきたが,高気圧での利用にはプラズマを発生させるのが困難であった。本研究では,アルミナチューブで被覆した細長いカーボンロッドをマイクロ波結合素子として用いることで大気圧でプラズマを長時間安定に発生させることに成功した。リアクターは矩形導波管のH面に垂直に挿入した石英ガラス管よりなる。2.45GHzのマイクロ波により加熱したカーボンロッドの先端より熱電子が放出されることによりプラズマが発生可能となる。応用として,窒素酸化物や揮発性有機化合物の一つであるトルエンの分解を行った。分解特性は有電極方式で処理断面積の比較的小さなバリヤ放電など他の非熱平衡プラズマによる処理と同程度であり,特に高濃度での分解に有効であることがわかった。濃度100〜2000ppm程度の窒素酸化物やトルエンを含み,数L/minの流量で流れる処理ガスに対して,分解率は80〜95%程度,エネルギー効率は3〜30g/kWhを得た。さらに,光触媒であるTiO_2との併用化の方式を考案した。触媒とプラズマの相乗効果は投入電力が比較的小さいときに現れることを見いだした。本装置の特徴より,真空プロセスチャンバーの排気やドラフトチャンバーから大気側へ放出するガスの処理,吸着剤にためられ高濃度となった有害ガスの後処理などへの適用が考えられる。
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