研究概要 |
炭化シリコン(SiC)はワイドバンドギャップ半導体であり,p, n型の荷電子制御が容易であり,絶縁破壊電圧がSiより一桁高く,熱伝導度も高いという特長がある。近年,SiCはSiやGaAsなどの既存の半導体では実現できない電力制御用の高パワー素子や高周波素子への応用の観点から注目を集めており,各国で光電子デバイス等の応用研究が急激に立ち上げられつつある。しかし,SiCの最大かつ基本的課題は高品質・大面積のSiCウェハーおよびSiC薄膜の開発であり、CVD法等の各種薄膜作製法が試みられている。 本研究では,現有のパルスYAGレーザ,イオン源,高周波(または直流)バイアス電源,永久磁石を併用したパルスレーザデポジション(PLD)装置によりSiC薄膜作製を行った。薄膜特性分析にFE-SEM、AES、GXRD、EDX、AFMやFT-IR等を用いた。その結果,SiC薄膜の結晶化には基板温度が非常に重要なパラメータの一つであることを明らかにした。また,磁界を用いた新しいPLD法により,プラズマプルームが変化すること,それによってドロップレットの減少が可能であること,大面積基板上に均一な薄膜が作製可能であること等を明らかにした。これまで困難であった基板温度800℃における結晶性SiC薄膜の作製に成功した。さらに,SiCプラズマプルームからの発光スペクトルを分光分析し,発光種を同定し,SiC薄膜特性とプラズマ特性の関係について検討した。その他の機能性材料としてCrC, WC, TiC, CN, cBN, SiN、TaN等の高硬度薄膜やSnO_2,WO_3,等の薄膜ガスセンサ素子作製も行い,SiC薄膜作製プロセスと比較検討した。以上の研究成果の一部をJJAP、Thin Solid Films等のジャーナルやFSE2001、IIT2000等の国際学会で発表し、従来得られなかった知見を得たものとして、世界的に高い評価を得た。この方面の課題を精力的に研究することは学術的及び工業的観点から非常に重要である。
|