研究概要 |
GaAs基板上に作製したFeSe薄膜の磁気輸送特性の解析,及び構造解析を行った. (1)FeSe薄膜の作製 GaAs基板上に高周波マグネトロンスパッタ装置にて作製したFe薄膜(膜厚50〜600nm)を,分子線エピタキシー装置内にてセレン化を行うことにより,FeSe薄膜を得た.セレン化の条件は基板温度400℃,セレン分子線強度4×10^<-8>Torrとした.ここで得られたFeSe薄膜のFe/Se組成比は2:3であり,バルク安定構造として知られているFe_3Se_4やFe_7Se_8とは異なる構造を有することが既に明らかとなっている. (2)磁気輸送特性 FeSe薄膜の抵抗率測定,ホール効果測定より,抵抗率ρ=1.1×10^<-4>Ωm,キャリア(電子)密度n=2.1×10^<23>m^<-3>であることがわかった.ホール電圧の弱磁界印加領域では強磁性体特有の現象,異常ホール効果と類似の特性を示したが,磁気抵抗効果(MR効果)測定における抵抗変化は微小であった.結晶構造に基づく異方性との関連を含め磁気輸送特性の解析は今後の課題とする. (3)X線回折法を用いた構造評価 GaAs(001)方向(膜垂直方向)2θ-θスキャンにより,FeSe薄膜からは(00L)回折ピークのみが観測された.ω/θ-ψ面での逆格子空間マッピング測定を行った結果,GaAs(001)基板からの(002),(004),(113)の各回折ピークに対応してFeSeからの回折ピークが観測された.FeSeはその回折パターンから格子定数0.551nmの立方晶であることが確認された.また,(110)回折,及び(LLL)回折が得られていることから,走査型電子顕微鏡で観察されたコラム型構造は,膜垂直方向はFeSe(001)配向しており,膜面方向はコラム毎にランダムな配向をしていることが明らかとなった.
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