研究概要 |
1.PdまたはPtを表面に薄く積層した,Pd/Ag合金をコートした片持梁型水素ガスセンサの試作 (1)昨年度までの研究より,Pdの替わりにPd/Ag合金を用いることにより,片持梁型水素ガスセンサの水素検出範囲が600Torrまで拡大することができるが,Pdを用いた場合に比べて十数倍応答速度が劣り,また大気中における特性の劣化が顕著であることが明らかになった. (2)大気中に保存したPd/Ag合金表面をオージェ電子分光法で分析したところ,大気中の硫黄によりPd/Ag合金が汚染されることが応答速度を遅くさせる原因であることが明らかになった. (3)硫黄によるPd/Ag合金表面の汚染を防止するためにPd/Ag合金表面にPd薄層を付加した片持梁を作成した.その結果,0.1Torrの水素に対する応答時間を40分から10分に短縮することができた.大気中に保存した場合の特性劣化も改善されたが,充分なものではなかった.この原因をオージェ電子分光法により分析したところAgが逆拡散してPd薄層表面に析出し,硫黄により汚染されるためであることが明らかになった. (4)硫黄による汚染を防止するためにPdよりもイオン化傾向が小さく汚染されにくいPtをPd/Ag合金表面にコートした片持梁型水素ガスセンサを作成した.その結果,0.1Torrの水素に対する応答時間は5分に短縮され,3週間大気中に保存した場合でも10分以内に抑えることができた. 2.水素ガスセンサとしてのシステム化 (1)昨年度までに,コンパクトディスクのフォーカシングサーボ機構を用いた変位検出システムの試作を行った.この時点ではフォーカシング情報を人間がチェックし,アクチュエーターを手動で調整するといったものでであった.これを自動化するために人間が介在していた部分をワンチップマイクロコンピュータ(PIC16F877)を用いて置き換え,ソフトウェアを新規に開発することにより完全自動化を実現した.
|