研究概要 |
ナノメートルサイズの結晶粒子から構成された高密度磁気記録媒体用薄膜への応用を目的として,逆ミセル法と有機分子による自己組織化手法を組み合わせた磁性ナノ微粒子配列膜の創製に関する検討を行った. 逆ミセル法が適用できる60℃以下の反応温度では,スピネル・フェライト微粒子合成のできるpH範囲が高温のフェライトめっき反応より高pH側にシフトする傾向を示したが,溶液をアルカリ性にするものとして水酸化ナトリウムよりもアンモニアを用いたほうがCoフェライト,マグネタイト微粒子の粒子寸法や結晶性の点で優れていた.合成したフェライト微粒子の寸法や結晶性は反応温度に依存しなかったものの,飽和磁化は反応温度の上昇とともに増加した.しかし,いずれも室温では超常磁性を示していた.また,Coの添加とともに5Kでの保磁力が増加し,10kOeを超えた.平均的な粒子寸法は10nm程度であり,1つの粒子は単結晶のように結晶性が高く,高分解能透過型電子顕微鏡(TEM)像による格子像とナノビーム電子線回折によるスポットパターンが得られた. TEM像には10nm程度で均一性の高い微粒子が集合した領域と,より寸法の小さな粒子が点在した領域が観察されており,比較的粒子寸法のそろった微粒子のみが移流集積により自己組織化的に集合することがわかった.また,規則性の高い配列を実現するためには溶媒の蒸発を精密に制御することが重要であることがわかった.この自己組織的集積現象は配列という観点だけでなく,微粒子寸法の自己選別機能という考え方もでき,合成の寸法均一性のマージンを増加させる製造面で有利な結果であると言える. さらに,マイクロメートル程度のピッチで,まだ寸法的にもコントラストなどの特性面でも十分なものではないが,有機分子の自己組織化を利用した配列膜のパターニングも行った.
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