研究概要 |
(110)面方位の量子井戸が持つ特異な物性を利用して、低閾値電流密度の半導体レーザを実現ために、新しいプロセス技術、ドライエッチ技術を開発し、この面の量子井戸構造半導体レーザを作製して、その特性を調べた。(110)面半導体基板は、[110]方位に対しては、劈開面を持つが、それに対して直角の[001]方位に対しては、劈開面がない。従来の(100)面上に形成された半導体レーザでは、[011]方位と[011]方位の両方位に劈開面があるために、レーザの反射面形成、素子分離の点で問題はなかった。しかし、(110)面では、劈開面が[110]方位だけであるため、レーザの反射面をエッチングにより形成する必要があった。そこで、Brをベースとするガスを用いた反応性イオンエッチングにより、良好な垂直の反射面が形成できる条件を確立し、ドライエッチ加工による反射ミラー面を持つ(110)面GaInAsP量子井戸構造半導体レーザを実現した。キャビティの方位は、[110]と[001]の両方位のレーザを製作し、ストライプ幅は、30μmで、キャビティ長は、300,600,900μmの3種類のレーザを製作した。この量子井戸構造半導体レーザにつき、パルス電流を用いて、電流-光出力特性を測定した。[001]の方位のストライプを持つレーザの電流閾値は、すべてのキャビティ長のデバイスで、[110]方位のものに対して、半分程度の著しく低い電流閾値密度を示した。[001]の方位のストライプを持つレーザでは、反射面としてドライエッチ加工によるミラー面を使用しているため、反射率は小さいが、それにもかかわらず電流閾値密度が小さい結果を得た。この原因は、この方位のレーザで発振に寄与している[110]偏光した光にたいする光学遷移行列要素の増大の効果が表れているものと考えられる。900μmキャビテイ長のレーザで、最低電流閾値密度0.6KA/cm^2が得られた。
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