研究概要 |
次世代移動体通信方式として期待されているDS/CDMAにおいてフェージング軽減や干渉波除去が大きな課題としてあげられている.一方,移動体通信と同じ電波環境を有する高度道路交通システムにおいても同様の干渉やフェージングの問題が発生すると思われる.本研究は,このような問題を克服するためにディジタルビームフォーマ(DBF)を基本構成とした,高機能スマートアンテナについて研究を行った. 1.平成11年度は,移動通信環境に適したCMA(Constant Modulus Algorithm)アダプティブアレーに着目し,性能改善を目指した.CMAアダプティブアレーは,最適化手法として最急降下法を用いた場合,電波環境によってはその最適化が遅くなってしまったり,また,アレーの重み付けの初期値によっては出力の信号対干渉及び雑音比が低下してしまう.このような不具合を改良するために,本研究では各素子の受信信号の位相のみを制御するCMAシステムを提案した.計算機シミュレーションを通して提案システムのCDMA通信方式への適用可能性を示すと共に,幾つかの重要な制御パラメータを導入し,その制御法についても実用的な手法を提案しその有効性を確認した. 2.平成12年度は,高分解能スペクトル解析法の一つであるESPRITを用いた到来波の信号パラメータ(到来方向,電力など)推定および推定結果に基づくアレーアンテナのビーム形成法について検討を行い,高機能スマートアンテナの要素技術という位置づけで研究を進めた.まず,ESPRITを用いて2次元到来角情報(方位角・天頂角)を推定することを目的として,従来のESPRITを拡張して,各種平面アレーに対して効率良くESPRITを適用する手法を考案し,計算機シミュレーションを通じて,その特性を明らかにした.また,再帰的に計算可能なQR分解に基づく高速再帰型ESPRITを2次元推定に拡張した高速再帰型2D Unitary ESPRITを提案し,移動通信における実用的な有効性を示した.
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