研究概要 |
次世代のMPEG7などに代表される画像圧縮技術では,単なる圧縮のみの手法ではなく,画像の検索、内容抽出なども効率よく行うことができる技術が求められている.本研究では,空間充填曲線を利用してこのような画像検索に向いた新たな画像圧縮技術の開発を目的とする.昨年度と本年度に得た研究成果は次の通りである.(1)まず,画像上の複数の特徴的領域(例えば,平坦な領域)を充填しながら連続的に走査するような新たな空間充填走査方式を実現した.本手法は,画像からMinimum Spanning Tree(最小全域木)に基づく任意形状分割木を作成し,この任意形状分割木を用いて複数の領域をそれぞれ充填しながら連続的に走査するアルゴリズムである.また、この走査情報を最小全域木の枝刈りによって効率よく削減する方法を開発した。(2)次に,トレリス符号量子化手法を用いることにより符号量の削減を実現し,圧縮効率の向上を図った.トレリス符号量子化とは,トレリス符号変調の符号化構造を圧縮に応用したものである.実際の画像を使った圧縮実験では,SN比において,約10分の1の圧縮率で0.5〜1.0dBの向上が見られた.(3)さらに,濃淡画像、カラー画像を対象として,色空間を含めた空間充填走査による画像圧縮手法の圧縮効率と処理速度との関係を,従来手法と比較して明らかにした.JPEGとの比較実験を行い,画像によっては,本手法が優れたり,あるいはやや劣ったりするが,視覚的にはほぼ近い画質であった.しかし,本手法の圧縮処理にかかる時間は,JPEGよりも約20倍かかることがわかった.計算量削減は今後の課題である.
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