研究概要 |
近年,ディジタル通信の高速化に伴い,画像,データ,音声等品質要求の異なる様々なメディアの通信サーゼスを同一の通信網で実現する広帯域統合サービスディジタル通信網(B-ISDN)に注目が集まっており,B-ISDNを可能にするATM(非同期転送モード)の高効率化に関する研究が盛んに行なわれている.ATM交換機において高効率なマルチメディア通信を行うためには,待ち時間遅延を小さくすること,スループットを高くすること,及び,バッファ溢れやセルの衝突によるセル棄却率を小さくすることが重要である.特にマルチメディア通信を行う場合,メディアによってトラヒック特性や,交換機における優先順位待ち時間遅延等に対する通信品質要求が異なり,さらに,放送性を有するマルチキャスト通信にも対応できることが必要である.そのため,これらの多様なトラヒックを扱いメディアの異なる要求を満たすようなネットワークの構成及び制御方法を見い出すことが重要な研究課題となっている.現在,通信品質の要求が異なるトラヒックについては多く研究されているが,通信品質サービスの要求が異なる複数の種類のセルが混在する場合の特性解析がなされていない.また,申請者らのこれまでの研究では,マルチキャストトラヒックを効率良く扱うことができるATMスイッチに関する研究が十分になされていなかった.本研究では,通信品質要求を考慮したトラヒック及びマルチキャストトラヒックによるマルチメディア通信ネットワークにおけるATMスイッチに対し,理論解析及び計算機シミュレーションの両面から,セル棄却率,待ち時間遅延等の基本的な諸特性について詳細に検討を行なった.これにより,マルチメディアを含む通信品質要求の異なるトラヒックやマルチキャストトラヒックに適したATM交換機の構成及び制御方法がより明らかになり,より高効率なマルチメディア通信ネットワークの構築が期待できる.
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