研究概要 |
LSI設計における大きなボトルネックとして世界中の設計者を悩ませていた「非収束問題」に対し,ホモトピー法を用いた新しいアルゴリズムを開発し,その大域的収束性を証明した.さらに産業界との共同研究により,バイポーラアナログ回路としては最大級の1万素子クラスのLSIを世界で初めて収束の保証付きで解くことに成功し,LSI設計期間の短縮や民生機器の高度化・低価格化に貢献した.また欧米で使われているホモトピー法の回路シミュレータに対して,プログラムのある部分に-1を付けることにより大域的収束性が保証されることを証明し,その収束性を飛躍的に改善するなど,国内外で「非収束問題」を理論面・実用面の両方から解決した. なお,このアルゴリズムはIEEE(米国電気電子学会)のNG-SPICEプロジェクトでも採用され,現在,IEEEの公式ページでこの方法を用いた回路シミュレータを無料でダウンロードできる状態となっている.それにより世界中の設計者が収束率100%の回路シミュレータを利用できるようになり,数十年もの間多くの設計者を悩ませた「非収束問題」は完全に解決されることになった.なおその成果はアメリカのウィリー百科事典や日本シミュレーション学会誌の巻頭言でも大きく取り上げられている. また,LSI設計における重要な未解決問題として知られている「非線形回路のすべての解を求めるアルゴリズムの開発」に対し,双対単体法を用いた新しいアルゴリズムを開発し,線形領域数10^<300>の超大規模問題の全解探索を実用時間内で行うことに成功した.それにより,これまで不可能と考えられていた「実用規模の回路の全解探索」に対し大きな可能性を与えた. また高分子化学の研究者との共同研究により,難解なことで有名な高分子溶液の多相平衡の計算問題に対し,その解を瞬時に求めることのできる新しいアルゴリズムを開発し,リエントラント3相平衡の発見や,世界で初めて4相平衡の計算に成功するなど,相平衡の様々なメカニズムを解明した.
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