研究概要 |
現在,超音波診断装置を用いた診断は不可欠のものとなっている。しかし現状は,画像を医師が目視で判断するという定性的な診断が主であり,超音波を用いた定量診断の確立が強く望まれている。本研究では,肝硬変を対象病変とし,病変進行による生体組織変化と生体からの反射エコーの振幅特性との関係を定量化し,臨床において実用的な診断システムを開発するための検討を行った。 まず,人病変肝臓組織の集中的な音響特性計測を行い,画像との定量的な関係を明らかにするとともに,肝臓組織からのRF信号を直接ディジタル化しその性質について検討した。広い周波数範囲にわたる非常に高密度な音響特性計測を行った結果,生体組織の音速と減衰の間の密接な関係を明らかにできた。また,そのデータをもとに超音波診断装置で得られる診断画像のシミュレーションを行い,その画像と実際の臨床画像との対比から,組織変化と超音波画像の定量的な関係について検討した。この結果,病変進行に応じて反射信号の振幅分布特性が変化していく様子が定量的に求められた。 この結果を用い,様々な病変進行度のBモード画像,RF画像において,正常に近い組織からの反射信号情報を一定振幅以下に抑圧し,病変情報を抽出する処理を施した。その結果,画像中から抽出される情報が,病変進行に伴って増加することがわかり,定量診断の可能性が示された。また,連続的に走査して作成した複数のBモード画像を用いて,抽出された情報を3次元領域で重ね合わせた結果,病変組織と思われる構造を3次元で明確に抽出することが可能となった。 以上のように,音響的な特性変化を利用して,一般に使われている超音波診断装置を自然な形で拡張した肝病変の定量診断技術を,従来の臨床診断,組織診断と矛盾無く結合し,臨床医にとって自然な形で受け入れられる実用的なシステムを開発することができた。
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