研究概要 |
阪神・淡路大震災を契機として,ライフラインの構造安全性ばかりではなく,震中,震後の機能性能,震後の修復性の重要性が再認識された.また,要求される安全性のレベルや機能性能は必ずしも一律ではなく,目的,用途の重要性,緊急性に応じて選択可能なものであることも認識された.このような背景から本研究では,ライフラインが有するべき地震後性能について,目的,用途の重要性,緊急性を考慮に入れて検討を行うとともに,構造破壊と機能性能との関係をライフラインのネットワーク形状を考慮しながら整理することにより,ライフラインに対する性能規定型設計法の導入の可能性について議論した. まず,想定される地震被害を受けた後の上水道流量解析を行い,各供給点で取り出すことのできる水量,水圧を求め,これらの地震後性能と構造被害との関係について検討した.つぎに,必要とされる地震後性能が与えられた場合に,その性能を確保するために必要な耐震補強策を幾通りか提案することのできる手法について検討を加え,それぞれの補強策の優位性を地震後性能の観点から定量的に評価できる手法を提案し,考察を加えた.本研究では,単位水量の水が供給されなかったときの水の貨幣価値を単位水量損失と呼び,これと地震後に最低必要とされる水量からの不足水量との積を困窮度と定義し,地震後の機能性能を評価するための指標とした.なお,単位水量損失は地震発生からの経過日数により変化するものとし,阪神・淡路大震災の事例をもとにこの関数を定めた.この指標を用いて,いくつかの耐震補強案が示された場合の優位性を定量的に比較する手法を開発した.さらに,これらの研究成果をもとに,ライフラインシステムに性能規定型設計法を導入する場合の利点と問題点を議論した.
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